女性アーティストに焦点を当てるグループ展「ウィメン・オン・ファイア」が、京都の艸居で開催される。会期は、1月23日〜2月22日。
本展は、革新的な表現方法と独自の視点で社会を見つめ、表現してきた女性アーティストたちの作品を紹介する展覧会。今日すでに著名な作家から、これまで見過ごされてきた作家まで、国内外の作家の作品が集う。出展作家は、篠田桃紅、三島喜美代、津守愛香、クリスティン・モルギン、シルヴィ・オーヴレ、ミリアム・メチタ、パエ・ホワイト、アネット・メサジェの8名。
1913年に旧満州に生まれた篠田桃紅は、5歳のときに父から書の手のほどきを受け、戦後の1956年に単身渡米。抽象表現主義の隆盛を目の当たりにして、文字の決まりごとを離れた新しい墨の造形「水墨抽象画」に転じ、限られた色彩と奔放な線による表現で高い評価を受けた。
1932年に大阪で生まれ、昨年に死去した三島喜美代。のちに伴侶ともなった三島茂司に師事し、新聞紙、雑誌、馬券などの印刷物を使った実験的なコラージュ作品の制作を始め、1960年後半からは素材を陶芸に変えて、大量に生み出されるゴミや氾濫する情報社会に埋没する恐怖感を表現した。
信楽で制作活動を展開する津守愛香は、神話やおとぎ話などを題材に、陶芸で身近な生き物や人を作るアーティスト。近年は娘が幼い頃に描いていたドローイングからテーマをとった陶芸作品にも取り組んでいる。
ロサンゼルスを拠点に活動するクリスティン・モルギンは、未焼成の粘土を使用して、アメリカで親しまれている絵本や、ドナルドダック、ヨーダ、ブラット・ピットなど、個人的あるいは集団的な記憶を呼び起こすオブジェやアイコンを用いた作品を制作している。本展では、昔の交際相手が作ったミックスが収録されているカセットテープの作品《Be A Good Little Pirate(Cassette)》などが展示される。
絵画からキャリアをスタートさせ、ファッションデザイン、彫刻、陶芸と表現の幅を広げてきたシルヴィ・オーヴレ。2021年に艸居で日本初個展「野獣と箒」を行った。本展では、女性が専業主婦として家事を担う社会背景に言及した、アンティークのギンガムチェックのエプロンを用いた作品《Blue Apron Broom》などを出展する。
ミリアム・メチタは、インスタレーションや謎めいたフォルムを作り出している彫刻家。耳や目、口などのない、意図的に原型をとどめた動物の造形などを制作している。本展では、3点の陶芸作品《firebirds》《before and after》《potatoe head》が展示される。
アート、デザイン、工芸、建築を融合させ、日常にある素材を儚いオブジェやインスタレーションとして発表してきたマルチメディアアーティストのパエ・ホワイト。磁器に金釉が施し、ポップコーンを造形した《Companion》が出展される。
文化の多様性の希求や、女性への偏った視点への疑問を制作の原動力とするアネット・メサジェ。1970年からは布、刺繍、糸、編み物など、身近にある素材を用いて、創作活動を行ってきた。本展では、黒い布手袋の指先から無数の色鉛筆が突き出した作品《La Lune-crayon(Pencil Moon)》を展示し、残酷さや人間の持つ相反する複雑さを日常の視点から浮き彫りにする。
なお本展では、アフガニスタンの若い女性たちの教育や就労を応援する非営利団体「EJAAD」をサポートし、刺繍などのアフガニスタンの伝統工芸の継承とともに、若い女性たちが活躍できる場を作ることを目指すという。