アートを通じた非日常体験を楽しめる夜の饗宴として人気を博してきた「六本木アートナイト」。2019年より年々発展を続けるこのイベント(2011年は東日本大震災、2020年、2021年はコロナ禍により中止)が今年も開幕する。会期は9月27日(コアタイム:17:30〜23:00)、28日(コアタイム:16:00〜23:00)、9月29日(コアタイム:16:00〜20:00)の3日間。入場無料。
会場は六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペースなど。インスタレーションやパフォーマンス、音楽、映像、トーク、デジタル作品など、約30組のアーティストによる約40のプログラムが繰り広げられる。
今回はそのなかから六本木ヒルズ、六本木の街なか、国立新美術館、東京ミッドタウンを中心にいくつかの作品を紹介しよう。
まず六本木ヒルズでは、アリーナでアトリエ シス、ウエストウォーク2階でツァイ&ヨシカワ、平山亮・平山匠、66プラザでHajime Kinoko、ノースタワー アートボードで志津野雷らの作品が登場。
ツァイ&ヨシカワの吉川公野は、東京での初展示となる作品《豊穣の宝石─Reflection》について「光の彫刻の下に黒いアクリルを敷いており、覗き込むと波のようにも見え、いろんな角度から見え方の違いを楽しむことができる。上からの写り込みも美しいので、階上からも眺めてほしい」とアピール。いけばなや盆栽のようにリラックスして取り組んだという本作は仕事帰りの人々の視線を集めていた。
六本木ヒルズを出て、街なかへ。六本木の交差点やビルの一角で、ジャン・ファンユー(張方禹)、ウォーターメロン・シスターズ(西瓜姉妹)、シン・チー(辛綺)、ユェン・グァンミン(袁廣鳴)、藤村憲之らの作品が披露される。
台湾出身のシン・チー(辛綺)はイグノポール2階で、蛍光塗料を施したワイヤーや金属、ブラックライトを使って植物などの有機性を主題にした新作《光るガジュマルの木の下で》を発表。台湾文化に根ざした本作に展示される椅子は実際に座れるようになっており、「アートナイトの休憩場所としても訪れてほしい」と作家は笑顔を見せる。同ビルでは、ユ・チェンタ(余政達)とミン・ウォンからなるウォーターメロン・シスターズ(西瓜姉妹)も作品を展示中。天界から降りてきたクィア姉妹が「お互いに抱きしめ合うの」と映像を通して呼びかける。
六本木から乃木坂方面に足を伸ばし国立新美術館へ向かえば、小寺創太、ジェニファー・ウェン・マの作品が人々を迎える。
小寺創太《フィラー》は、六本木駅から国立新美術館に至る路上に配置された6人の看板持ち、およびここに敷かれた芝と看板によって構成される作品。タイトルの《フィラー》はフィラーテキスト(レイアウト作業時に用いられる無内容な文章)に由来しており、看板持ちが掲げる看板に書かれているのは、世界でもっとも普及しているフィラーテキストのひとつを機械翻訳にかけたもの。6人が六本木のどこに出没するかは明らかにされておらず、サプライズ的な楽しみのある作品でもある。
東京ミッドタウンでは、TOKYO MIDTOWN AWARD 2024のファイナリスト展に加え、丹羽優太が作品発表。TOKYO MIDTOWN AWARD 2021アートコンペグランプリ受賞者でもある丹羽優太は、2022年に小児科病棟のために描き下ろした絵巻物を再構成して展示している。
こうした展示のほかにも、パフォーマンス、トーク、ライブイベントなどの企画が盛りだくさん。六本木の街全体でアートを楽しむ3日間をお見逃しなく。
野路千晶(編集部)
野路千晶(編集部)