アートやデザインの仕事をする人々がふだん気軽に訪れるアートスポットにはどのような場所があるのでしょうか? 今回は滋賀県立近代美術館ディレクターの保坂健二朗さんにおすすめスポットを聞きました。美術館やギャラリー、書店やショップまで、お出かけの選択肢のひとつに加えてみるのはいかがでしょうか。
POSTは2011年にオープンした、「出版社」というくくりで本を特集し、取り扱う本がすべて定期的に入れ代わるブックショップ。ドイツのアート系出版社「Steidl(シュタイデル)」のオフィシャルブックショップでもあります。
「東京都写真美術館に行ったあと、こことYAECA恵比寿に寄るのが定番ルート。置かれている本の量がそれほど多くないのはじつは結構嬉しいことで、セレクトした人の目を信じて可能な限り手にとることで、新しい動向をつかんだ気になれるのです。古本があるのも嬉しい」(保坂)
POST
住所:東京都渋谷区恵比寿南2-10-3 1F
http://post-books.info/
言わずと知れた日本で最初の国立美術館、東京国立近代美術館。同館の最大の特徴は1万3000点を超える国内最大級のコレクションと、毎回異なるテーマを設けてそれらの作品を紹介する、充実のコレクション展です。
「ここのコレクション展は、所蔵品が充実している×キュレーターの力がある=ほとんど企画展レベル。見逃せないのは、3階にあるソル・ルウィットのウォール・ドローイング。都内ではほかに六本木のテレビ朝日や新宿アイランドにもあるけれど、ここのは「線」に基づくタイプで国内唯一」(保坂)
東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
https://www.momat.go.jp/ge/topics/am20201218/
港区海岸にある現代アートのギャラリー、横田茂ギャラリーは、1976年に東京・日本橋で開廊した雅陶堂ギャラリーを発端に、現在に至ります。岡崎和郎、河口龍夫、村上友晴らの個展を中心に年間2〜5回の展覧会を行うほか、東京パブリッシングハウスとして独自の展示企画や出版も展開。
「展示空間に対する感覚のチューニングをしたくなったら訪れる場所。四分の一円のような平面+高い天井という特徴的な空間(旧インクスティック鈴江ファクトリー)に、それほど多くない作品が置かれているのが常ですが、作品の持つ強さや意味が確かに感じられるようになっているのです」(保坂)
横田茂ギャラリー
住所:東京都港区海岸1-15-1
http://www.artbook-tph.com/syg/news.html
Token Art Center(トークンアートセンター)は2019年にオープンした、複数のギャラリースペースとくつろげるカフェ、図書スペースからなるアートセンター。展覧会のほかにワークショップやパフォーマンス等のイベント、作品集を刊行するなど活動は多岐にわたります。
「作家のチョイスがユニークで、リノベされた空間も面白いので、つい足を向けてしまう。1階のホワイトキューブ的な展示スペースに対して2階は木造家屋のテイストが残してあって、そんな対比のなかで同じ作家の作品を見られるのが楽しい。帰りにビール片手に下町散歩を楽しむのもまたよし」(保坂)
Token Art Center
住所:東京都墨田区東向島3-31-14
http://token-artcenter.com/
軽井沢の森の中でアートと呼吸する/自然と共生する美術館というコンセプトで、菊竹清訓設計による数寄屋造りのような低層の佇まいが特徴のセゾン現代美術館。軽井沢の自然に溶け込む同館の庭園では、川のせせらぎを聞きながら緑の中に点在する彫刻作品を巡ることができます。*美術館もしくはカフェを利用の場合のみ入園可
「最近、アーティストが庭園のデザインを手がけるケースが世界的に増えていますが、東京近辺でお勧めなのがここ。手がけたのは、若林奮(1936-2003)。鉄を素材に多用したことで知られる伝説の彫刻家ですが、個人的には緑を手がけたときが最高の作家です。東京ではないですが、新幹線も使えば東京駅から最短1時間40分程度で着けるのです」(保坂)
セゾン現代美術館
住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉芹ヶ沢2140
https://smma.or.jp/garden
保坂健二朗
ほさか・けんじろう