公開日:2024年4月5日

GINZA SIXの吹き抜けでヤノベケンジの猫が大爆発! 新作《BIG CAT BANG》は、《太陽の塔》をオマージュした生命の物語

展示期間は2024年4月5日〜2025年夏(予定)。GINZA SIX中央の大きな吹き抜け空間が銀河と化し、無数の「宇宙猫」が空を舞う

会場風景より

GINZA SIX中央の吹き抜け空間と言えば、2017年のグランドオープン時に披露された草間彌生の《南瓜》に始まり、ダニエル・ビュレン、ニコラ・ビュフ、塩田千春、クラウス・ハーパニエミ、吉岡徳仁、名和晃平、ジャン・ジュリアンら国内外のアーティストたちの作品が空間を彩ってきた。GINZA SIXの顔とも言えるこの空間の演出を今回新たに託されたのは、アーティストのヤノベケンジ。4月5日より新作《BIG CAT BANG》が披露されている。

会場風景より
会場風景より

公開前の設営段階からSNSでは大きな話題を呼んでいた本作。まず目に飛び込むのは、宇宙服に身を纏った巨大な猫と、岡本太郎《太陽の塔》をモチーフとした宇宙船。エスカレーターで上階に上がりながらしげしげと見つめると、目に飛び込むのは無数の猫、猫、猫。いままさに、宇宙船から飛び立とうとしている様子が躍動感たっぷりに表現されており、間近にその様子を見ると、「生命の始まり」やストーリーの序章を思わせる。

会場風景より、飛び立つ猫たち

ヤノベケンジは1965年大阪生まれ。1990年代初頭より、「現代社会におけるサヴァイヴァル」をテーマに機能性を持つ大型機械彫刻を制作。ユーモラスな形態に社会的メッセージを込めた作品群を国内外で発表してきた。2017年より「船乗り猫」をモチーフにした、旅の守り神「SHIP’S CAT」シリーズを手がけ、福岡、パリ、上海、大阪、京都、台湾などを巡ってきた。2022年に開館した大阪中之島美術館にもシンボルとして「SHIP’S CAT(Muse)」(2021)が恒久設置されており、今回の《BIG CAT BANG》もそんな「SHIP’S CAT」シリーズのひとつとなる。

会場風景より、ヤノベケンジ《SHIP’S CAT(ONK-1)》
会場風景より、ヤノベケンジ《SHIP’S CAT(Crew/Black)》
会場風景より、岡本太郎記念館の協力のもとで展示される《太陽の塔 Tower of the Sun(1/50)》

安全や出会いを助ける守り神となって、混迷する世界においても人々や若者の旅を導いて欲しいという願いが込められている「SHIP’S CAT」。ヤノベは次のようなメッセージを発表している。

35億年前に生命がこの地球に誕生し、5度にわたる生物大量絶滅を乗り越えて、いま私たちは生かされている。生命はどこから来て、そしてどこに行くのか?
岡本太郎が言い放った「芸術は爆発」のテーマを「猫大爆発」という妄想に乗せて、生命と宇宙の神秘のイマジネーションの炸裂をお届けしたい。
混迷と危機の世紀に立つ現在だからこそ、我々は想像と創造を爆発させ、宇宙からの俯瞰した視点を獲得しなければならないのだ。

また、《BIG CAT BANG》にあわせて発売されたメイキングブックでは、ヤノベケンジと岡本太郎記念館・ 平野暁臣館長との対談、編集者・アートプロデューサーの後藤繁雄によるヤノベケンジのインタビューを収録。そのなかでヤノベは「SHIP’S CAT」に込められた思いを「世界が暗黒につつまれていくような状況の中で、人々をできるだけ幸福に導くような存在」になっていってほしいと明かしている。

芸術も爆発、猫も爆発、パワフルなメッセージを全方位に放つ《BIG CAT BANG》を見てしばし晴々しい気持ちに浸ってみてはいかがだろう。

なお今年7月12日から11月10日にかけ、南青山の岡本太郎記念館で「ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と」(仮)が開催予定だという。こちらの開催も楽しみに待ちたい。

ヤノベケンジ

野路千晶(編集部)

野路千晶(編集部)

のじ・ちあき Tokyo Art Beatエグゼクティブ・エディター。広島県生まれ。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、ウェブ版「美術手帖」編集部を経て、2019年末より現職。編集、執筆、アートコーディネーターなど。