『魔法騎士レイアース』『カードキャプターさくら』『X -エックス-』をはじめ数々のマンガ作品を世に送り出してきた創作集団CLAMPの展覧会「CLAMP展」が、国立新美術館で開催される。会期は2024年7月3日から9月23日まで。
いがらし寒月、大川七瀬、猫井、もこなの4人から成るCLAMP。1989年に『サウス』第3号(新書館)にて『聖伝-RG VEDA-』で商業誌デビューし、以降『東京BABYLON』『X -エックス-』『魔法騎士レイアース』『カードキャプターさくら』『xxxHOLiC』など、少女誌、少年誌、青年誌を横断しながら多様な作品を手がけてきた。
本展では、『聖伝-RG VEDA-』から最新作『カードキャプターさくら クリアカード編』までの全23作品を網羅した約800点(前後期合わせて)の原画が集結。プレス内覧会で解説を行った国立新美術館特定研究員・吉村麗によれば、CLAMPの展覧会としては最大規模だという。
会場は、「C」「L」「A」「M」「P」を頭文字とした「COLOR」「LOVE」「ADVENTURE」「MAGIC」「PHRASE」、さらにマンガ以外の創作活動も含む、画業の歴史を関連資料で紹介する「IMAGINATION」、本展のために描き下ろされたカラーイラストを展示する「DREAM」の7つのエリアで構成。初公開となる資料や展覧会オリジナルの映像、体験型展示も登場し、様々な角度から彼女たちの35年におよぶ創作活動の軌跡を辿る。
冒頭の「COLOR」のエリアには、これまでの全23作品のカラー原画約200点(前後期合わせて)が集結。連載の扉絵、雑誌の表紙や付録、単行本の表紙や口絵などのために描かれたイラストが一堂に会し、「絵画作品」としてのCLAMP作品の魅力を伝える。
作品ごとに展示されたイラスト群からは、カラーインクを使用した初期の作品に始まり、1990年代からマンガ界に広まり一早く取り入れたというコピック、さらにはアクリルガッシュやパステル、墨、デジタル作画など、作品のテーマや世界観にあわせて、多様な画材や表現技法が用いられてきたことがわかる。エアブラシを使って大胆な構図で描いた『聖伝-RG VEDA-』とカラースクリーントーンを使用したスタイリッシュな『東京BABYLON』など、同時期に発表された作品のイラストを見比べて鑑賞できるのもポイントだ。時代や掲載誌による画風の変化も感じることができる。
続くエリアからはマンガ本編の原稿が展示される。「LOVE」のエリアでは、CLAMP作品で描かれてきた様々な愛のかたちにフォーカス。8つのカテゴリーに分類された「愛」のシーンを描いた原稿が、作品を横断して配置されている。
大好きな人へ届けるまっすぐな「好き」や、大切な誰かを守り抜く決意、心に秘めた想い、葛藤など、キャラクターたちの表情と言葉を通して、「CLAMPが描く愛」の多様さに触れることができる。
読者の心を掴むCLAMPのストーリーテリングの力を伝えるのが「ADVENTURE」のエリア。『聖伝-RG VEDA-』『東京BABYLON』『X -エックス-』『魔法騎士レイアース』『カードキャプターさくら』『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』の6作品に光を当て、各作品第一話の一部の原稿を連続して展示している。作品ごとにあらすじ解説のパネルもついており、モノクロ原画を読みながら、物語としてのCLAMP作品を楽しむことができるエリアになっている。
さらに「MAGIC」のエリアには、CLAMP作品を読んだときの「魔法にかけられたような体験」を表現したという映像展示が登場。ファンタジーや魔法、不思議な力を描いた作品から、3つの大きなスクリーンに数々のキャラクターが映し出され、来場者が作品のなかに入ったような没入感を演出する。
CLAMPの紡ぐ「言葉の力」に注目する「PHRASE」のエリアは二つの展示室で構成。一つ目の部屋では、『xxxHOLiC』を取り上げ、印象的なシーンを描いた本編のマンガ原稿約40点が展示される。二つ目の部屋には、壁一面にCLAMP作品のフレーズが散りばめられた空間が登場。
さらにこの展示室には、約120種のCLAMP作品の言葉が書かれたステッカーが入った「PHRASE BOX from CLAMP」というボックスが設置されている。来場者がボックスから引いた言葉を自由に壁に貼っていくことで、空間をCLAMPの言葉で埋め尽くすという体験型展示も楽しむことができる。
CLAMPの35年間の創作活動を総覧できるエリア「IMAGINATION」には、各作品の連載時期など、1989年から2024年までの画業を視覚化した巨大年表をはじめ、『なかよし』などの過去の掲載誌、英語版の単行本など関連資料が並ぶ。展示室の中央には、本展のために行われたCLAMPへのインタビューをもとに、その言葉を記したインスタレーションが展示されている。
さらに田中芳樹の小説『創竜伝』の挿絵や、『コードギアス 反逆のルルーシュ』『カードファイト!! ヴァンガード Divinez』『カードファイト!! ヴァンガード overDress』のキャラクター設定画、ハローキティ50周年記念のコスチュームデザインといった、マンガの領域を超えた創作活動も紹介される。
展覧会を締めくくる最終章「DREAM」では、本展のためにCLAMPが描き下ろしたカラーイラスト原画が公開される。この阿修羅とさくらのイラストは、CLAMPの「はじまり」と「これから」をイメージして描かれたという。
国立新美術館特定研究員・吉村麗は、本展について「1989年にデビューされてから、つねにマンガ家として、またマンガ以外の活動でも最前線を走られてきたCLAMP先生のこれまでの活動を総覧できる展覧会として企画されております」と説明。「これだけの原画が一堂に会する展覧会はなかなか行われないと思いますので、ぜひ鑑賞いただければ」と呼びかけた。
本展の音声ガイドは、アニメ『xxxHOLiC』四月一日君尋役、『ANGELIC LAYER』小林虎太郎役、『コードギアス 反逆のルルーシュ』ルルーシュ・ランペルージ役など、CLAMPと縁の深い声優の福山潤が担当。展覧会特設ショップでは、展覧会のために制作されたオリジナルグッズが多数販売される。
なお、展覧会初日の7月3日から5日の3日間は「開幕記念特別観覧日」となっており、限定チケット購入者のみが入場可能。チケットの申し込みはすでに終了している。