台湾の桃園市立美術館の分館である横山書法芸術館(Hengshan Calligraphy Art Center)が、韓国国立現代美術館(National Modern and Contemporary Art, Korea、以下「MMCA」)とコラボレーションし、「美術館の『書』:韓国近代・現代書芸展(美術館裡的「書」:韓國現當代書藝展)」を開催している。会期は7月6日から10月21日まで。
コロナ禍の2020年にMMCAでキュレーターのペ・ウォンジョンが韓国初の近現代書の特別展である同展をオンラインで開催。人の行き来が難しかった当時、幸いなことに横山書法芸術館側がオンラインで展示を見るこができ、3年の準備期間を経て開催に至った。横山書芸芸術館は台湾で現代書を扱う唯一の美術館で、韓国の書の展覧会開催は今回が初となる。
書について、台湾では「書法」、韓国では「書芸」、日本では「書」または「書道」と呼ぶ。書芸は「書法」と「芸術」を組み合わた言葉で、書の「読む」機能的な側面と視覚美的側面が一体となった言葉である。韓国国立現代美術館館長キム・スンヒによると、韓国では長らく「書芸はアートなのか?」という問いがあるという。今回の台湾との交流でその問いについて一緒に考えていきたい、と述べた。
展覧会は4つの章立て、計95点の作品で構成されている。展示は日本の植民統治からの韓国の復興時代から始まり、韓国の書が伝統的な書の技法にとどまらず、抽象画や立体作品、日常遣いのデザインプロダクトまで、いまもなお独自の発展をし続けている過程を紹介している。
第一章では韓国書芸のマスターピースが並ぶ。書き手が師の書き方を真似するだけではなく、自分なりの手法を模索した時代で、第二章では韓国伝統の手法を大切に守りながらも、新しい表現を展開した作家を中心に紹介している。
第三章では、書道家に限らず、広い意味で芸術家の作品を取り扱う。西洋の近代美術、とくに抽象絵画が韓国で紹介されると、韓国の芸術家も書の要素を取り入れつつ、抽象的な作品を創作した。
イ・チョルジョの《More Beautiful than a Flower 》はハングルで「花より美しい」という言葉が紙と墨で作られたコラージュ作品だ。書と絵が切り離すことができない「書画同源」の概念が新たな解釈で表現されている。
第四章では生活と文字のつながりを感じる、さまざまなメディアを使った作品が並ぶ。ハングルの基本は「天・地・人」。つまり、天を「・」に、地は「ㅡ」に,人は「ㅣ」とし、作られた言語だ。それらの造形は日常のデザインにも広がり、「読む」以外の可能性を広げている。イ・サンヒュンはハングルの「花」の字を韓紙を使ってライト《開花》に仕立てた。
本展は書を通じた国際交流で、歴史や方法の違いを通して、東アジアの近現代アートシーンにおける対話の道を切り開くことを目指している。また現在韓国の多くの人が漢字を読むことができない。おそらく台湾、韓国、日本の鑑賞の仕方にも差異があり、可能なら意見交換することでこの展覧会開催がさらに大きな意義となるだろう。
「美術館の『書』:韓国近代・現代書芸展(美術館裡的「書」:韓國現當代書藝展)」 展
会期:7月6日(土)〜10月21日(月)
会場:横山書法芸術館
公式ウェブサイト:https://tmofa.tycg.gov.tw/ch/exhibitions/current-exhibitions/117