8月1日に開幕した国内最大規模の芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」は、企画の一部の「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれ、その後も複数の海外アーティストが展示の中止・一時中断を求めるなど混迷を極めている。
トリエンナーレのテーマに掲げられた「情の時代」は、津田大介芸術監督が「感情・情報・なさけ」という意味を込めたものだったが、皮肉にもインターネット上のデマや煽動、脅迫や政治家同士の対立など、この時代の「分断」を「情」によって改めて浮き彫りにするものになってしまった。
しかし話題となっている作品以外にも焦点を当てるべき作品は多数あり、トリエンナーレ全体として捉えて評価する視点も忘れてはならない。今後もパフォーミングアーツや映像・音楽プログラムも多数控えている。
東京からも詰め込んだスケジュールなら日帰り、もしくは1泊2日で十分に楽しむことができるあいちトリエンナーレ、今一度観るべき作品をまとめてみたい。
なお、Tokyo Art Beatアプリの会員ユーザは「ミューぽん」で割引チケットと引き換えができる。
■愛知芸術文化センター
今回もメイン会場となる愛知芸術文化センターは、主に8F、10Fに作品が並ぶ。
■名古屋市美術館
■四間道・円頓寺
再興して賑わう商店街エリアを中心に、会場が点在するエリア。残暑も厳しいので熱中症対策は万全にしてから行きたい。
■豊田市美術館・豊田市駅周辺
豊田市美術館には大型インスタレーション作品が多い。同時期開催のクリムト展のため館内や駐車場がかなりの混雑である点を気をつけたい。美術館から歩いていける旧高校校舎に高嶺格作品がある。
駅の近隣にはホー・ツーニェンが映像インスタレーションをしている喜楽亭などがある。
各会場間はオフィシャルサイトでの電車・バスの案内のほか、ガイドマップもPDFでダウンロードできるのでぜひ活用したい。
会期も後半に入り、パフォーマンスアーツも見逃せない。サエボーグの初の演劇的インスタレーションは今週末9月8日までだ。
なお、「表現の不自由展・その後」企画展の展示中止に伴い、自作の展示の一時中止等の申し出があった12組の海外アーティストとの協議の結果がまとまった。
8月20日以降、下記のように展示が変更になっている。
展示の一時中止
愛知芸術文化センター
タニア・ブルゲラ 展示室を閉鎖しステートメントを掲出
ピア・カミル 音楽を停止し、幕が一部捲り上げられ、ステートメントを掲出
レジーナ・ホセ・ガリンド 映像作品の上映が中止、撮影時に使用した小道具が散りばめられる
クラウディア・マルティネス・ガライ 照明が落とされ、映像作品の上映が中止、ステートメントを掲出
ドラ・ガルシア ポスターの上にステートメントを掲出
イム・ミヌク 展示室を閉鎖しステートメントを掲出
パク・チャンキョン 展示室を閉鎖しステートメントを掲出
ハビエル・テジェス 展示室を閉鎖しステートメントを掲出
名古屋市美術館
ドラ・ガルシア ポスターの上にステートメントを掲出
モニカ・メイヤー 《The Clothesline》で来場者から寄せられた回答が取り外され、破られた未記入のカードが床に散りばめられる。ロープにはステートメントが掲出され、《沈黙の Clothesline》に変わる
四間道・円頓寺
ドラ・ガルシア ポスターの上にステートメントを掲出
豊田市美術館
レニエール・レイバ・ノボ 絵画を新聞で、彫刻の一部をゴミ袋で覆い、ステートメントを掲出
展示の辞退
愛知芸術文化センター
CIR(調査報道センター) 展示室を閉鎖
ウーゴ・ロンディノーネは、署名しながらも展示を継続することになったほか、田中功起がこのオープンレターに賛同し、9月3日より展示を「再設定」している。
「表現の不自由展・その後」については、企画展の実行委員会と事務局が今後も協議していくということだが、まだ具体的な道筋は見えない。これからいずれの展示も無事に再開されるよう続報を待ちたい。